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絶対に相続させたくない相続人を排除する方法があります。「欠格と廃除」

相続人の欠格と廃除:目次

相続人の欠格・廃除とは？
相続人の欠格について
相続人の廃除について

相続人の廃除とは？
廃除の要件
廃除の方法

コラム:「勘当」なんて法律上存在しない？
「相続人の欠格と廃除」に分類・タグ付けされた質問と回答一覧

相続人の欠格・廃除とは？

法定相続人であれば、被相続人の死亡により遺産を承継することができるのが原則です。もっとも、法定相続人であれば何をしようと相続できるとしてしまうと、相続人として相応しくない者であっても当然に財産を得ることができるということになってしまい、被相続人や他の相続人にとって不満が生じることになってしまいます。

例えば、法定相続人が自分に不利な遺言書をわざと破って捨ててしまったり、あるいは法定相続人が被相続人を生前に虐待していたようなケースを想像してみましょう。このような場合に、まんまと法定相続人が遺産をせしめてしまう…というのは明らかに不当です。

「××に相続させたい」、「△△には相続させたくない」と思う場合、被相続人は遺言を作成しておくことによって、ある程度自己の思い通りに相続させることができます。しかし、遺言でその旨を定めたとしても、法定相続人（兄弟姉妹を除く）には遺留分の限度で遺産が保障されているため、遺言だけでは法定相続人の相続を完全に否定することはできません。
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そこで、法律上一定の場合に「欠格」や「廃除」という制度によって、このような者の相続権を否定することができることになっています。要するにこれらは、「こんな人には相続させたくない」という被相続人の意思を“完全に”実現するための制度なのです。

相続人の欠格について

法定相続人が以下に挙げる欠格事由のいずれかに該当する場合、相続人としての権利を失うことになります。このことを相続人の欠格といいます。

相続人の欠格事由

1.故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした場合: 例えば遺産を得るために被相続人を故意に殺害した場合や、被相続人の兄弟が被相続人の子を殺害したような場合がこれにあたります。ドラマのような話です。「同順位以上」ということなので、自分より相続順位が下位の者を殺害してもこれにはあたりません。例えば、被相続人の兄弟は、被相続人の子よりも相続順位が下位であるため、子が兄弟を殺害してもこれにはあたらないことになります。
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2.被相続人が殺害されたことを知りながら告発や告訴を行わなかった場合: 被相続人が殺害されたなら、警察に告訴・告発をするのが当たり前です。それにもかかわらずあえて何もしないのは、殺人に加担するに等しいため、欠格事由とされています。「しめしめ、殺してくれてありがとう」と思うだけならまだしも、告訴・告発をあえてしないということまでは許されません。
3.詐欺・脅迫によって被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた場合: 例えば、遺言が自己に不利なものになるという理由で「遺言を作成したら殺す」などと脅すような場合がこれにあたります。
4.詐欺や脅迫によって被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更をさせた場合: 3とは逆に「俺に全ての遺産を渡すという内容の遺言を書け」と脅すような場合がこれにあたります。
遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合: 例えば、相続人が勝手に遺言書を作ったような場合や、被相続人の死後に自分に不利な遺言書を見つけたためにこれを燃やしてしまった場合がこれにあたります。

欠格事由に該当すれば、被相続人は当然に相続人としての権利を失います。ここでいう「当然に」というのはつまり、欠格させるために何らの手続も必要ないということです。後述する「廃除」のように、遺言で定めておいたり、家庭裁判所に請求する必要はありません。先に挙げた欠格事由がどれも深刻な事態であるため、このような取り扱いとされているのです。

欠格とされると、相続人としての権利を失うことになるため、法定相続人であっても相続することができなくなります。また、それだけでなく受遺者としての資格も失うため、遺贈を受けることもできなくなります。
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もっとも、欠格は代襲原因にあたるため、欠格者の子は代襲相続をすることができます。例えば、被相続人に子および孫がおり、子が相続欠格事由に該当するとしても、孫は代襲相続によって遺産を相続することができます。
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相続人の廃除について

相続人の廃除とは？

上記の通り、欠格事由は割と深刻なケースに限られています。しかし、欠格事由に該当しないとしても、「この人には相続させたくない」と思うようなケースは多々あります。

そこで欠格の他に、「相続人の廃除」という制度もあります。相続人の廃除は、欠格と異なり、当然に相続人の資格を剥奪するものではなく、被相続人の意思により剥奪するものです。具体的には後述する方法により廃除をすることになります。

相続人の廃除は、法定相続人の内、兄弟姉妹を除く者が対象となります。なぜ兄弟姉妹が除かれているかというと、兄弟姉妹には遺留分が認められないため、兄弟姉妹に相続させたくないのであれば遺言を作成すれば足りるからです（逆に兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が認められるため、遺言でこれを排除しても、遺留分減殺請求をされることになってしまうため、「廃除」の手続が必要になるのです）。

廃除により、法定相続人は相続人としての資格を失います。もっとも、廃除された相続人の子はこれを代襲相続することができます。ここまでは「欠格」の場合と同様です。しかし、「欠格」と異なり、廃除は受贈者としての資格までも奪うものではないため、廃除されたとしても、遺贈を受けることは可能です。

廃除の要件

単に気に入らないから、という程度の理由では廃除はできません。以下のいずれかの要件を満たす場合に限り、廃除は認められます。

相続人の廃除の要件: 1.被相続人に対し虐待・重大な侮辱をした場合; 2.その他著しい非行があったとき

これらは、単に主観的に「虐待だ」「非行だ」と思うだけでは足りず、客観的かつ社会的にみて相続権の廃除を正当とする程に重大なものでなければなりません。したがって、被相続人の側に非行の原因がある場合には、廃除が認められないこともあります。また、単に音信不通というだけでは廃除は認められ難いですが、音信不通となった経緯によっては認められることもありえます。

廃除の方法

廃除の方法として、「生前廃除」と「遺言廃除」とがあります。

生前廃除

被相続人は生前に相続人の廃除をすることができます。これをするためには、家庭裁判所に請求し、廃除の審判を受けなければいけません。

また、廃除の審判がなされたとしても、それだけでは足りず、市区町村に廃除の届出をして、戸籍に記載してもらわなければならないため、忘れないよう注意しましょう。

遺言廃除

相続人の廃除は、遺言で定めておくこともできます。

遺言で相続人の廃除が定められた場合、被相続人の死後に廃除の手続をしなければならないため、必ず遺言執行者を選任しなければいけません。そのため、遺言廃除をするにあたっては、必ず遺言執行者についても定めておきましょう。
関連記事:被相続人の意思が詰まった遺言を実行するキーパーソン、遺言執行者とは？

遺言執行者は、生前廃除の場合と同様、廃除の審判を家庭裁判所に対して請求し、審判を受けた後に市区町村に届出をすることになります。この手続については、生前廃除の場合と同様であり、手続の主体に違いがあるだけです。

【コラム】「勘当」なんて法律上存在しない？

よく「お前なんて勘当だ！」といって息子を家から追い出す…というようなシーンがドラマであったりします。勘当という他にも、「親子の縁を切る」というような表現がなされたりもします。

しかしこの「勘当」という言葉は民法上のどこにもありません。親子の縁を切る制度もありません（厳密にいえば特別養子縁組がありますが、ここでいう「勘当」の場面とは異なります）。「勘当」に法律上の意味はなく、単に事実上かかわりが無くなった、という程度のものなのです。

したがって、「勘当」されたとしても、親子の縁が切れるわけではなく、子どもは正当な相続人であるということになります。たとえどんな不良息子であったとしてもです。

もっとも、前述の相続人廃除の手続をとれば、法定相続人であっても相続人としての資格を剥奪することができるため、要件さえ満たせばこれによって「勘当」した息子を相続から排除することが可能となります。しかし、この息子に子がいれば、子がどのみち代襲相続をすることになるので、廃除をしてもあまり意味がないという場合もあるかもしれません。

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「相続人の欠格・廃除」のQ&A一覧

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